【要約】男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版

【要約】男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版

本ガイドラインは、科学的根拠(エビデンス)に基づいた治療法を医師と患者双方に提供することを目的として、2010年版ガイドラインの成果を基に、近年の新しい治療薬や治療手段、研究結果を反映し、診療水準のさらなる向上を目指し公表されました。特に、本ガイドラインでは次の3点を重視しています。

  • 標準的な治療法の提示
  • 最新の研究成果の反映
  • 患者の選択肢拡大

背景と目的

  • 男性型脱毛症(AGA):主に思春期以降に始まり、頭頂部や前頭部の髪が薄くなる特徴を持つ。遺伝や男性ホルモンが関与。
  • 女性型脱毛症(FAGA):頭頂部の広い範囲で毛が薄くなるのが特徴で、更年期以降に多発。
  • 目的:科学的根拠に基づいた標準的な治療法を提示し、患者のQOL向上と診療水準の向上を目指す。

診療ガイドラインにおける推奨度

  • A:強く勧める。
  • B:勧める。
  • C1:行ってもよい。
  • C2:行わないほうがよい。
  • D:行うべきではない。

診断

男性型脱毛症

  • 家族歴や脱毛経過の問診。
  • 視診で前頭部や頭頂部の髪が細く短くなることを確認。
  • Norwood分類が広く使用されている。

女性型脱毛症

  • Ludwig分類を採用。更に早期診断を重視。
  • 慢性休止期脱毛や全身性疾患(貧血、甲状腺疾患など)の鑑別が重要。

主な治療法と評価

推奨される治療法

フィナステリド(内服)

  • 推奨度:A(男性型脱毛症)、D(女性型脱毛症)。
  • 効果:DHTの生成を抑制し、毛髪の成長期を延長。
  • 副作用:性機能障害や肝機能障害の可能性。

デュタステリド(内服)

  • 推奨度:A(男性型脱毛症)、D(女性型脱毛症)。
  • 効果:5α還元酵素I型・II型を阻害し、より強力な効果。
  • 副作用:フィナステリドと類似(性機能障害など)。

ミノキシジル(外用)

  • 推奨度:A(男性型脱毛症は5%、女性型脱毛症は1%)。
  • 効果:血流改善により毛包を活性化。
  • 副作用:皮膚炎やかゆみ、まれに顔面多毛。

自毛植毛術

  • 推奨度:B(男性型脱毛症)、C1(女性型脱毛症)。
  • 効果:AGA治療に十分な効果がない場合の選択肢。
  • 人工毛植毛術は推奨度D(有害事象が多いため)。

低出力レーザー

  • 推奨度:B(男性型・女性型脱毛症)。
  • 効果:毛髪の成長を促進。
  • 副作用:軽微な皮膚の乾燥やかゆみ。

推奨されない治療法

ミノキシジル内服

  • 推奨度:D。
  • 理由:認可されておらず、安全性が十分検証されていない。

成長因子導入療法・細胞移植療法

  • 推奨度:C2。
  • 理由:先進医療段階であり、安全性と有効性が未検証。

人工毛植毛

  • 推奨度:D。
  • 理由:有害事象の報告が多く、FDAで使用が禁止。
治療法 推奨レベル 効果 副作用
フィナステリド内服 A(男性型)、D(女性型) DHT生成を抑制し毛髪成長期を延長 性機能障害、肝機能障害の可能性
デュタステリド内服 A(男性型)、
D(女性型)
5α還元酵素I型・II型阻害で強力な効果 性機能障害等(フィナステリドと類似)
ミノキシジル外用 A(男性型5%、
女性型1%)
血流改善で毛包を活性化 皮膚炎、かゆみ、顔面多毛の可能性
自毛植毛術 B(男性型)、
C1(女性型)
AGA治療効果がない場合の選択肢 特になし(技術・経験のある医師が前提)
低出力レーザー B(男性型・女性型) 毛髪成長を促進 皮膚の乾燥、かゆみなど軽微
ミノキシジル内服 D 安全性が未検証 重大な心血管障害のリスク
成長因子導入療法・細胞移植療法 C2 先進医療段階で有効性未検証 安全性が未検証
人工毛植毛 D 有害事象が多いため推奨されず 有害事象の報告が多い

免責事項

本ガイドラインの役割

    • 標準的治療法を示すが、個別の診療や治療方針を限定するものではない。

保険適用外治療

    • 保険適用外の治療法にも言及するが、使用には十分な説明と患者の同意が必要。

今後の展望

  • 新たな治療法(例:再生医療、PRP治療など)の進展に期待。
  • 定期的な改訂を通じて診療ガイドラインの充実を図る。

このガイドラインは、科学的根拠に基づいた最新の治療法を提供し、脱毛症治療の標準化を推進する重要なリソースです。

 

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