
本ガイドラインは、科学的根拠(エビデンス)に基づいた治療法を医師と患者双方に提供することを目的として、2010年版ガイドラインの成果を基に、近年の新しい治療薬や治療手段、研究結果を反映し、診療水準のさらなる向上を目指し公表されました。特に、本ガイドラインでは次の3点を重視しています。
- 標準的な治療法の提示
- 最新の研究成果の反映
- 患者の選択肢拡大
背景と目的
- 男性型脱毛症(AGA):主に思春期以降に始まり、頭頂部や前頭部の髪が薄くなる特徴を持つ。遺伝や男性ホルモンが関与。
- 女性型脱毛症(FAGA):頭頂部の広い範囲で毛が薄くなるのが特徴で、更年期以降に多発。
- 目的:科学的根拠に基づいた標準的な治療法を提示し、患者のQOL向上と診療水準の向上を目指す。
診療ガイドラインにおける推奨度
- A:強く勧める。
- B:勧める。
- C1:行ってもよい。
- C2:行わないほうがよい。
- D:行うべきではない。
診断
男性型脱毛症
- 家族歴や脱毛経過の問診。
- 視診で前頭部や頭頂部の髪が細く短くなることを確認。
- Norwood分類が広く使用されている。
女性型脱毛症
- Ludwig分類を採用。更に早期診断を重視。
- 慢性休止期脱毛や全身性疾患(貧血、甲状腺疾患など)の鑑別が重要。

主な治療法と評価
推奨される治療法
フィナステリド(内服)
- 推奨度:A(男性型脱毛症)、D(女性型脱毛症)。
- 効果:DHTの生成を抑制し、毛髪の成長期を延長。
- 副作用:性機能障害や肝機能障害の可能性。
デュタステリド(内服)
- 推奨度:A(男性型脱毛症)、D(女性型脱毛症)。
- 効果:5α還元酵素I型・II型を阻害し、より強力な効果。
- 副作用:フィナステリドと類似(性機能障害など)。
ミノキシジル(外用)
- 推奨度:A(男性型脱毛症は5%、女性型脱毛症は1%)。
- 効果:血流改善により毛包を活性化。
- 副作用:皮膚炎やかゆみ、まれに顔面多毛。
自毛植毛術
- 推奨度:B(男性型脱毛症)、C1(女性型脱毛症)。
- 効果:AGA治療に十分な効果がない場合の選択肢。
- 人工毛植毛術は推奨度D(有害事象が多いため)。
低出力レーザー
- 推奨度:B(男性型・女性型脱毛症)。
- 効果:毛髪の成長を促進。
- 副作用:軽微な皮膚の乾燥やかゆみ。
推奨されない治療法
ミノキシジル内服
- 推奨度:D。
- 理由:認可されておらず、安全性が十分検証されていない。
成長因子導入療法・細胞移植療法
- 推奨度:C2。
- 理由:先進医療段階であり、安全性と有効性が未検証。
人工毛植毛
- 推奨度:D。
- 理由:有害事象の報告が多く、FDAで使用が禁止。
治療法 | 推奨レベル | 効果 | 副作用 |
---|---|---|---|
フィナステリド内服 | A(男性型)、D(女性型) | DHT生成を抑制し毛髪成長期を延長 | 性機能障害、肝機能障害の可能性 |
デュタステリド内服 | A(男性型)、 D(女性型) |
5α還元酵素I型・II型阻害で強力な効果 | 性機能障害等(フィナステリドと類似) |
ミノキシジル外用 | A(男性型5%、 女性型1%) |
血流改善で毛包を活性化 | 皮膚炎、かゆみ、顔面多毛の可能性 |
自毛植毛術 | B(男性型)、 C1(女性型) |
AGA治療効果がない場合の選択肢 | 特になし(技術・経験のある医師が前提) |
低出力レーザー | B(男性型・女性型) | 毛髪成長を促進 | 皮膚の乾燥、かゆみなど軽微 |
ミノキシジル内服 | D | 安全性が未検証 | 重大な心血管障害のリスク |
成長因子導入療法・細胞移植療法 | C2 | 先進医療段階で有効性未検証 | 安全性が未検証 |
人工毛植毛 | D | 有害事象が多いため推奨されず | 有害事象の報告が多い |
免責事項
本ガイドラインの役割
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- 標準的治療法を示すが、個別の診療や治療方針を限定するものではない。
保険適用外治療
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- 保険適用外の治療法にも言及するが、使用には十分な説明と患者の同意が必要。
今後の展望
- 新たな治療法(例:再生医療、PRP治療など)の進展に期待。
- 定期的な改訂を通じて診療ガイドラインの充実を図る。
このガイドラインは、科学的根拠に基づいた最新の治療法を提供し、脱毛症治療の標準化を推進する重要なリソースです。